■結論:依存症は「意思が弱い」からではなく“苦痛から逃げるための行動”
この本が伝える最重要メッセージは、
依存症=ダメ人間ではなく、心身の痛みに耐えられない人の「生存戦略」
ということです。
お酒、タバコ、食べ物、ギャンブル、ゲーム、推し活、SNS…。
多くの人は、適度に依存しながら生活しています。
それは息抜きであり、回復の手段でもあるからです。
問題になるのは、
デメリットが大きいのに、やめられない状態に陥った時。
- 健康を壊しても飲む
- 借金してでもギャンブルする
- 仕事や家族を犠牲にしてまでゲームする
本人も「良くない」と分かっているのに止められない。
これが“依存症”です。
■人は快楽ではなく「苦痛を和らげるため」に依存症になる
依存症は「楽しさに溺れた結果」ではありません。
“消えたいほどの苦しみ”を避けるために、依存物質へ逃げるのです。
例えば、頭痛持ちが常に痛み止めを持ち歩くように、
人生の痛みを抱えた人は酒・ゲーム・推しなどを消痛薬として使います。
重要なのはここです。
- 快楽はすぐ飽きる
- しかし苦痛の緩和は飽きない
だから依存が続く。
本の著者・横道誠氏は、発達障害・宗教二世・家庭内暴力など
重い苦痛を抱え、過食とアルコールに溺れたと語っています。
依存症になるのは弱い人ではなく、つらい人です。
■依存を「無理に禁止」するのは危険
多くの家族や友人が犯す最大の誤解がここです。
依存物質を取り上げれば治る
実際は逆。
依存物質は命綱=松葉杖です。
・酒がないと壊れる人
・タバコでしか心が落ち着かない人
・ギャンブルでしか現実を忘れられない人
依存物質は彼らを“今日も生きさせている支柱”です。
その松葉杖を一気に奪う──
歩けなくなり、最悪は命を絶つ。
精神科医・松本俊彦氏は
“強制断酒で亡くなる人”を何度も見てきたと語ります。
■依存症治療の鍵は「人とのつながり」
この本の核心はここです。
薬でも根性でもなく、コミュニティが治療。
心理学で有名な“ラットパーク実験”。
- 狭い箱で1匹 → 麻薬を押し続け死亡
- 仲間と遊具のある環境 → ほぼ麻薬を使わない
依存は孤独を埋める代替物。
孤独が弱まれば依存は必要なくなる。
AAや自助グループはその機能を果たします。
「同じ苦しみを持つ人が受け入れてくれる」環境は圧倒的に回復を促します。
■少しずつ減らす方法も有効
“完全断酒だけが正義”ではありません。
研究では、
- 禁止グループ
- 調整グループ(量を決めて利用)
→ 治療後の危険行動率に差がない
つまり、
「嘘をつかず、自己否定せず続けられる」方法が最適です。
■家族は加害者ではない。できる支援は“相談”
依存者の家族は、
-暴言
-暴力
-金銭トラブル
-ゴミの処理
-近所対応
地獄のような日常に追い込まれます。
最も傷つくのは家族です。
しかし家族は専門知識を持たないがゆえに、
「やめろ」「恥ずかしい」「情けない」
と本人を追い詰めてしまいます。
正しい対応は“専門機関へ相談”
自助グループは家族向けプログラムもあります。
■依存を遠ざけるために“会話できる場所”を持つ
依存の最大の原因である孤独。
現代は大人ほど孤立します。
-愚痴を言える相手がいない
-弱音を吐けない
-仕事は競争と比較だけ
-趣味もソロプレイ化
だからこそ、
-カフェ
-図書館
-ジム
-趣味コミュニティ
-オンライングループ
でもいい。
軽い会話ができる場所を持つだけで依存症を遠ざけます。
■まとめ:依存症は苦痛からの避難行動。孤独を埋める人とのつながりが回復への道
- 依存=悪ではない
- 依存症=デメリットが勝っても止められない状態
- 快楽ではなく“苦痛の緩和”が依存を作る
- 強制的な禁止は命を奪う
- 回復にはコミュニティが必要
- 少しずつ減らす治療も正解
- 家族は被害者、専門機関へ相談
- 軽い会話ができる居場所が人生を救う
依存症は誰にでも起こり得ます。
孤独を抱えたとき、人は何かにしがみつきたくなる。
だからこそ、人とのつながりが最強の治療薬なのです。
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